運送業の会計と税務

日本の物流を支える運送業には一定数のドライバーとトラックの確保が欠かせません。これらドライバーの人件費とトラックの調達費用が運送業の主要なコストとして挙げられます。

運送業を営むにあたり、これらの費用をどのように管理していけばよいのか、会計や税務の観点からわかりやすく解説していきます。

日本の物流を支える運送業には一定数のドライバーとトラックの確保が 欠かせません。これらドライバーの人件費とトラックの調達費用が運送 業の主要なコストとして挙げられます。

運送業を営むにあたり、これらの費用をどのように管理していけばよい のか、会計や税務の観点からわかりやすく解説していきます。

運送業の利益構造

原価率

日本政策金融公庫の調査(※)によると、赤字企業も含む調査対象会社の全体での道路貨物運送業の原価率は51.1%、そのうち黒字企業の平均原価率は52.9%でした。

運送業の原価はドライバーの人件費や運送関係の外注費などがあたります。意外にも黒字企業のほうが原価率が高い結果となっています。

これはドライバーの給与水準の高さが結果として原価率の高さに表れていると考えられます。黒字企業は給与水準を含めた従業員の待遇面を良好に保つことができ、従業員の長期雇用につながることがうかがえます。

経験豊富なドライバーは運送業にとって重要な財産です。従業員の良好な待遇と長期雇用を実現するためには、それを支える高い労働生産性が必要となります。生産性や競争力を向上する方法については後半で説明します。

人件費率

上記の調査(※)によると、赤字企業も含む調査対象会社の全体での道路貨物運送業の人件費対売上高は37.4%、そのうち黒字企業の平均の人件費対売上高は35.5%でした。また、従業者1人当たり売上高は全体で12,982千円、黒字企業の従業者1人当たり売上高の平均は13,719千円でした。運送業は労働集約型の産業ですので、ドライバーなどの労働生産性を高めることが競争力強化につながる点が数字に表れています。

そのような背景もあり、ITなどを活用した業務効率化ツールを積極的に活用する企業も見られます。

(※)日本政策金融公庫「中小企業の経営等に関する調査」2019年版

繁忙期と決算期

運送業で法人を設立する場合には、注意して決算日を決めましょう。原則として、決算日から2か月以内に法人税などの税金計算を終え、納付する必要があります。年に1度とはいえ大変な作業ですので、決算日は忙しくない時期にしておきます。

運送業の繁忙期はお客さんが誰かによって変わります。例えば顧客が小売り系であれば、お中元やお歳暮のある8月、12月が忙しいですし、食料品系であれば飲食業が盛んな4月や12月が忙しくなります。

開業時にメインのお客さんがはっきりしている場合は、繁忙期を想定しておきましょう。

トラックは自前かリースか

運送業に欠かせないのがトラックなどの運送車両です。

運送車両はドライバーの人件費と並び、運送業の大きなコストとなります。

運送車両を準備するにあたり、自前で購入する方法とリースで調達する方法があります。

自前で購入する場合のメリットとデメリット

自前でトラックを用意する場合、メリットとしては資産になる点です。10年は乗り続けられるので、使い続けるのも売却するのも会社の自由ですので、運用上の選択肢が広いです。

一方で重量税などの各種税金や修繕などの維持費がかかるため、思わぬ追加の運用コストが生じる可能性もあります。

リースのメリットとデメリット

リースのメリットはコスト管理がしやすい点です。契約にもよりますが、リース契約は基本的に各種税金などが料金にあらかじめ含まれています。メンテナンス費用も料金に含める契約もあり、自前で購入するよりコストの見通しが立てやすいです。

一方で買い取り条項がない場合には、リース期間が経過したときは車両を返還することになります。また、原則としてリース期間中は契約を終了させることは出来ません。

交通違反があったときの注意点

運送車両を使うため、スピード違反や駐車違反によって、違反金を納めることもあります。

法人税法ではたとえ事業に関係したものであっても、交通違反金は損金(税金計算上の費用)と認められませんので注意が必要です。なお、業務外でドライバーが交通違反をした場合で、会社がその違反金を納めたときは、税務上その金額は従業員への給与として取り扱われます。

また重大な交通事故を発生させてしまった場合は、社会的信用が低下するとともに、行政処分による車両の使用停止や事業所の営業停止の可能性があります。したがってドライバーへの安全教育は欠かせません。

(法令の根拠:法人税法55条4項の1、所得税法28条・36条)

運送業の設備投資と補助金

運送業が競争力を強化するには、車両以外にも効率的な物流のための設備投資が不可欠です。ときには業務の効率化が図れるソフトウェアや施設などが必要となり、資金繰り面でも検討が必要でしょう。

設備投資にあたっては補助金制度や税制優遇措置を利用することで、資金面での負担を軽減させることができます。

例えば補助金制度は、大きなものでは「ものづくり補助金」という補助金制度があり、採択された場合、最大で1,000万円の補助金を受け取ることができます。

このように設備投資を後押しする制度が存在する一方で、これらの申請には当然ながら行政による審査があります。申請書類の用意には周到な準備が必要となり、自ら行う場合には会社の業務を圧迫する恐れもあります。また補助金については他企業との競争もあり、申請したものの採択されないことも珍しくありません。

そこで補助金制度や税制優遇の制度に実績のある税理士に申請を依頼することで、自社の業務負担を増やさず、より確実に申請を通すことが期待できます。

(法令の根拠:租法42の12の4)

運送業の労務

周知のように運送業許可を得るためには5人のドライバーを確保する必要があります。労働集約型の産業である運送業にとって、荷物を運ぶドライバーは大事な収益の源です。

したがって優秀なドライバーの獲得と継続雇用が重要であり、時として採用費や人件費などの支出が拡大する可能性もあります。

このような人件費の拡大に対しては、「雇用拡大促進税制」という、継続して雇用している人材の給与が上昇した場合、一定の要件に合えば税額を控除できる制度があります。

この「雇用拡大促進税制」は増加した部分の人件費のうち15%から最大25%を税額控除することができます。非常に便利な制度ですが、適切な計算と税務申告書への記載が必要となります。そこで給与データについて税理士と連携することで、要件に合致すれば適切に税額控除を受けることができます。

(法令の根拠:租法42の12の5)

資金調達

以上のように設備投資や人材確保の面で先行投資が求められるため、運送業は時には融資による資金調達が必要となります。しかし開業間もない企業は実績がないため、銀行から融資を受けるには難しい場合があります。

そこで日本政策金融公庫の創業融資などを利用するのがおすすめです。公的な金融機関である日本政策金融公庫であれば、個人事業主や中小零細企業を応援する姿勢が強く、開業間もない企業でも融資を受けることができます。

創業融資を受ける場合は創業計画書の提出などが必要です。事業主が自ら作成することも可能ですが、融資支援に実績のある税理士に協力してもらうことでより魅力的な創業計画書を作り、融資を実現しやすくなります。

外注費の注意点

運送に関して自前の人員だけでなく、外注を活用することもあると思います。

ときには独立した元社員に仕事を回すつもりで、外注を依頼することもあるでしょう。しかし場合によっては外注費として処理していたことが、税務署の指摘によって給与となることもあるので注意が必要です。

原則、運送の外注費であれば源泉徴収が必要ないのですが、給与となれば源泉徴収が必要です。

外注としていたものが給与とされた場合、源泉徴収もれという扱いを受けることになります。

給与と外注費の線引きはかなり専門的ですので、税理士と相談したほうが無難といえます。

ぜひ税理士のサポートを受けよう

日本の物流を支える運送業の社長は多忙です。

客先への営業活動や資金繰り、車両の管理もありますし、ときにはドライバーの穴を埋めることもあるでしょう。

そのような中で経理処理は大きな負担になることが多いです。決算書などの数字の部分を軽視しているわけではないけれど、経理まわりを苦手に感じる方もいるでしょう。負担に感じる業務、苦手な処理については専門家に依頼して、浮いた時間を経営に生かすほうが事業は成長しやすいです。

経理や申告だけでなく、経営の悩み事も税理士に相談することで、知恵を借りられたり、ほかの専門家を紹介してもらえたりと、経営の知見も広がります。

昨今は物流のIT化やECサイトの普及などで小口貨物が増加するなど、運送業界も変化が大きくなってきました。変化に追いつき、競争力を強化するためにもぜひ外部アドバイザーである税理士を活用していきましょう。

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